大阪地方裁判所 平成元年(わ)1308号 判決 1989年10月20日
本店所在地
大阪市北区野崎町七番八号
新日本商事株式会社
(右代表者代表取締役 岩重正一)
本店所在地
兵庫県尼崎市御園町五番地
日正工業株式会社
(右代表者代表取締役 岩重正一)
本籍
兵庫県尼崎市常光寺二丁目三五番地
住居
兵庫県宝塚市月見山一丁目一〇番四八号
会社役員
岩重正一
昭和二三年一月三日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官藤村輝子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人新日本商事株式会社を罰金六〇〇〇万円に、被告人日正工業株式会社を罰金一二〇〇万円に、被告人岩重正一を懲役二年六月に処する。
被告人岩重正一に対し、この裁判確定の日から四年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人新日本商事株式会社(以下、被告新日本商事という。)は、大阪市北区野崎町七番八号に本店を置き、電気製品等の組立加工請負等を目的とし、被告人日正工業株式会社(以下、被告日正工業という。)は、兵庫県尼崎市御園町五番地に本店を置き、機械部品等組立加工請負、愛玩動物の販売、繁殖等を目的とするいずれも資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人岩重正一(以下、被告人という。)は、被告新日本商事及び被告日正工業(以下、両社をあわせて被告各社という。)の代表取締役としてその各業務全般を統括していたものであるが、被告人は、
第一 被告新日本商事の業務に関し、その法人税を免れようと企て、
一 架空の経費を計上するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、被告新日本商事の昭和五九年九月一日から昭和六〇年八月三一日までの事業年度における実際所得金額が三億五七〇〇万三八三一円あった(別紙(一)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一〇月三一日、大阪市北区南扇町七番一三号所在の所轄北税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億九六七〇万三九一一円で、これに対する法人税額が八一五九万九八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告新日本商事の右事業年度における正規の法人税額一億五〇九九万五一〇〇円と右申告税額との差額六九三九万五三〇〇円(別紙(1)税額計算書参照)を免れた
二 前同様の方法により所得の一部を秘匿した上、被告新日本商事の昭和六〇年九月一日から昭和六一年八月三一日までの事業年度における実際所得金額が二億九三二九万六二一四円あった(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一〇月三一日、前記北税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二一九八万五五一〇円で、これに対する法人税額が五〇一四万八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告新日本商事の右事業年度における正規の法人税額一億二四三〇万三一〇〇円と右申告税額との差額七四一六万二三〇〇円(別紙(1)税額計算書参照)を免れた
三 前同様の方法により所得の一部を秘匿した上、被告新日本商事の昭和六一年九月一日から昭和六二年八月三一日までの事業年度における実際所得金額が二億六二〇九万二七四七円あった(別紙(三)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一〇月二九日、前記北税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五七四〇万九九一四円で、これに対する法人税額が二一一六万三六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告新日本商事の右事業年度における正規の法人税額一億七四二万八〇〇〇円と右申告税額との差額八六二六万四四〇〇円(別紙(1)税額計算書参照)を免れた
第二 被告日正工業の業務に関し、その法人税を免れようと企て、
一 前同様の方法により所得の全部を秘匿した上、被告日正工業の昭和六〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額が四五二五万七二六〇円あった(別紙(四)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和六一年二月二七日、尼崎市西難波町一丁目八番一号所在の所轄尼崎税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が九七万二四四〇円で、納付すべき法人税額がない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により法人税額一六三四万二七〇〇円(別紙(2)税額計算書参照)を免れた
二 前同様の方法により所得の一部を秘匿した上、被告日正工業の昭和六二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額が九五二三万八三九一円あった(別紙(五)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和六三年二月二九日、前記尼崎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二八四〇万五九四五円で、これに対する法人税額が一〇三〇万七四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告日正工業の右事業年度における正規の法人税額三八三七万七二〇〇円と右申告税額との差額二八〇六万九八〇〇円(別紙(2)税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目)
(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。
判示全事実につき
一 被告各社代表取締役兼被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人に対する収税官吏の各質問てん末書(76、78ないし80、82、84ないし89、91ないし93、96、99、101 102)
一 近藤実(54)、岩重久江、光山こと盧初美(62)、広地雅明(五通)及び細川章二に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(30ないし33)
一 収税官吏作成の各写真撮影てん末書(35、36)
判示第一の各事実につき
一 被告人に対する収税官吏の各質問てん末書(75、77、83、90、94、95、97、98)
一 近藤実(55)、水口光二(56)、光山こと盧初美(59ないし61)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(13ないし15、17、20、25、27、29)
一 大阪法務局登記官作成の登記簿謄本
判示第一の一の事実につき
一 被告人に対する収税官吏の各質問てん末書(81、100、103)
一 水口光二に対する収税官吏の質問てん末書(57)
一 収税官吏作成の各査察官調査書(11、12、18、19)
一 北税務署長作成の証明書(4)
判示第一の二、第一の三の事実につき
一 収税官吏作成の査察官調査書(26)
判示第一の二の事実につき
一 鹿上靖人に対する収税官吏の質問てん末書
一 収税官吏作成の各査察官調査書(16、21)
一 北税務署長作成の証明書(6)
判示第一の三、第二の三の事実につき
一 収税官吏作成の査察官調査書(23)
判示第一の三の事実につき
一 収税官吏作成の各査察官調査書(22、23)
一 北税務署長作成の証明書(7)
判示第二の各事実につき
一 被告人に対する収税官吏の各質問てん末書(104ないし108)
一 林悦子に対する収税官吏の質問てん末書(70)
一 収税官吏作成の各査察官調査書(44ないし50)
一 収税官吏作成の写真撮影てん末書(34)
一 神戸地方法務局尼崎支局登記官作成の登記簿謄本
判示第二の一の事実につき
一 北税務署長作成の証明書(39)
判示第二の二の事実につき
一 南基成に対する収税官吏の質問てん末書
一 北税務署長作成の証明書(110)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとする。
さらに、被告人の判示第一の各所為は被告新日本商事の業務に、判示第二の各所為は被告日正工業の業務に関してそれぞれなされたものであるから、被告各社については、いずれも法人税法一六四条一項により判示第一の各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項をそれぞれ適用し、以上の各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告新日本商事を罰金六〇〇〇万円に、被告日正工業を罰金一二〇〇万円にそれぞれ処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 三好幹夫)
別紙(一)
修正損益計算書
(新日本商事株式会社)
自 昭和59年9月1日
至 昭和60年8月31日
<省略>
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
(新日本商事株式会社)
自 昭和60年9月1日
至 昭和61年8月31日
<省略>
<省略>
別紙(三)
修正損益計算書
(新日本商事株式会社)
自 昭和61年9月1日
至 昭和62年8月31日
<省略>
<省略>
別紙(四)
修正損益計算書
(日正工業株式会社)
自 昭和60年1月1日
至 昭和60年12月31日
<省略>
<省略>
別紙(五)
修正損益計算書
(日正工業株式会社)
自 昭和62年1月1日
至 昭和62年12月31日
<省略>
<省略>
別紙(1)
税額計算書
新日本商事株式会社
<省略>
別紙(2)
税額計算書
日正工業株式会社
<省略>